「寄り添う」「ヒト・ネコ・ミドリ」平屋の家
寄り添う。
その緩やかに曲がる歩道を、なだらかな丘を登るような感覚で歩いていると、優しい南風と特徴的な三角の敷地が出迎えてくれました。周辺環境を観察すると、遠景の稜線におおらかに囲まれながらも、ボリューム感のある施設や高低差のある住宅が建ち並んでおり、道路に面する間口が広いことなどから、近隣との関係性や距離感を大切にしつつ穏やかに過ごせる設えと、この風景に静かに呼応するような佇まいが必要だと感じました。
そこで、駐車場と庭(距離の確保)を除いた余白を十分に活かせるよう、敷地に対して木造グリッドを雁行型で合わせることにより、この場所ならではの座り方(配置)となり、道路の上り下りでは見え方が変化していく陰影が特徴的な構成を目指しています。また、内部空間は最大限の面積を活かせるよう廊下をなくし、大きな窓を組み込むことで全体の広がりや外との一体感も生まれます。
ご要望である空間や、「ヒト・ネコ・ミドリ」の日常も考慮しながら窓や壁の位置を慎重に配していますので、土間植物と借景を感じながらの料理や食事、刻々と変化する雲の濃淡と流れる風、季節の移ろいとともに彩る山々をリビングで感じていただければ幸いです。この土地に沿う佇まいが刻々と変化しながら、雁のように街を先導するようなランドマークになってくれることを願っています。